個人的には大変読みやすい作品だった。くどい描写もないし、情報が足りない部分もない。一応歴史ものになるのだろうが、それ特有の小難しい表現はないので、そういった心構えがなくても抵抗なく読める。桃太郎が「危ないところでしたね」と爽やかに決め込んだところでは、こちらもムカッ腹が立った。露姫同様に血が逆流する感じを味わえたのは、そこまで上手く誘導してもらえたからと思う。奪い合うことが鬼を生むという、本物の昔話にあってもおかしくない「教訓」のようなものを含んだお話と解釈した。
雨に関しては確かに印象が薄いと感じた。桃太郎が襲来した時点では小雨が降っているが、これは最終シーンまで降っているのだろうか。多分降っていると推測はできるものの、読者は読んでいるうちにちょっとした情報は忘れてしまうので、雨が降っていることをところどころで解らせたほうが良かったかもしれない。鬼が露姫のもとへ襲来したときは、それが上手くできていたのになぁ…と惜しく思った。最後の一文を引き立てるためには、冒頭シーンもさることながら最終シーンでの降雨が効果的と思う。
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